7250609

月夜空を翳る雲
草原のなかをひた走る


月の夜の午前3時、網目模様のモアレが部屋に白夜のように影を落としながら、夜が静かに沈んでいく

せせら笑いをする背中をひっくり返し、畳と雲と天井の間に射し込む光に寝そべり、しけたモクのむくろのお腹を両手に組み

あリングあベル
あリングあベル
あベル
音のする脈拍を
耳に刻む

旅がトラベルでツーリズムでオデセウスでトリプルでジャーニでいつもいつもいつまでも空中のチャリ散歩を聴きながら

丸目の夜道にたたずんだあの高校、夜の講堂の壇上にはいつもの首吊りがよみがえり

8-02-3:32

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道を見つめながら精神を羽交い締めにする4つ隅の画枠を嵌め込んだ色と容姿の伽藍の壁から眼前と襲いかかる威厳の仏心が無言のまま私を睨み見据えて下の口をすぼませながら蒼白のお面が滴し込まれた具象のお汁の膠はバラバラとひび割れてざらざらと情象のかたまりが剥がれ落ちていったベンガラは確かに私のものだった

ふと目覚めるとここにあるものぜんぶあげるからと手に差し出すすべてのものは灰と風に散った


すさむ体に少し怯えた小鳥が電話内で口をあけた
艶消しのネオグリーンのスプレーが窓の外を明るくしていた
朝が塗り替えられていたのだと同時にたった一度きりの蝉の嗚咽がいつもの朝を迎えた
たった一度の私の朝を一度に迎えてくれた

何もかもが一度にやってきた

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弾けば雨が路を叩いた
歯を咬みながら
コンビニ戸口で
傘をすぼませ
いっぱし暖簾で
わざと、らしい
置きっぱの傘差し、があった

頬に冷たい柄を押しあて、、歩いていた、、、雨風のリズミカルな足、、と耳と電磁の明かり窓、、、三つ目の側面を振り分けて、後ろを振り向くとそこには誰しも一度は握る背徳の反旗
翻っていた

妄想を恐らく知に変え
知を恐らく想像に変え
想像を恐らくイマに変え
実に変え
実を恐らく
ほうとあ
ほうと

胡蝶蘭の夢物化
物活

統一せる論を誰かしら書けないものかと、私ひとり手提げ袋の中から出てきたひとつ前の自転車や、帽子。巻き取られたフイルム、腐った作業着、殴り書きノート、ゴッホの手紙、煙草


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なまくらな俺の雨に斗よは無く、無口なのか、面黒い空よりあけて電柱が傾いていた夜の夜明け、雷の恵みを神が音に聞いた

なまくさい蝉の哭くにほひに任せ蔦の這う女の背鰭胸鰭がのたうちまわる森のなかを駆け巡った

雨のフロント硝子に青く残る君の声と面影は背なかのストリームのクラクション

タバコを吹かし京都460
前車輪のクラッチつなげ

母親が工場の立つ煙突からこぎ出す自転車に子を乗せて


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ボブディランがカーステから流れた、彼の歌声は静電気で痺れまくった肘てつをくらい、雨降るように流れ落ちた、ジャックナイフの鋒頭に冷たく凍るアイスの溶ける夏の、ハープのブォンフォノンのオープンキィを合わせドライブシートを寝かせながら、ウィンカーを左右に振らせている車はUターンできぬまま、彼の片桐ユズル訳詩集を探しても僕の本棚に消えていた。親に電話する。

あぁ蛙の夜泣きの声に滑り込むように膨らんだ彼のハープ音と嗄れた喉声がアップダウンしえいた。

回想中
*

THE STONE BENCH

MICHEL KIWANUKA

Mirel Wagner

至極せせこましい眺めではないのか
腕のついた両足が
入れ替わり立ち替わりに
音の出ない地面を揺らしながら、走りだす
ご覧なさいまし
アーケードを走るな
なまやさしいフラグのネオンが点いては消え
囲われた三面の鏡を眺めては
ひとり飛びつく井の蛙が
また点いて

方法を得ず、卑近のた群れのつまらぬものは切って捨て名前を消して
歩いていれば、
確かに道はあるのだが
閉ざされた門の
屋敷ばかりが建ち並ぶ
友禅西陣の街なか通り、ひとり
静かに過ぎていく
嘘八百屋の店さきに
ばか高い値札のナスや
人参やハッサクやら
まぶしすぎるくらいの
照明下にならんでいる。