/カイ(χ)の化石の目蓋はいつまでも閉じばったままだった /天と地を展(の)ばしながら /点と点へ手足を繋げ/ゆっくりとした手つきで/杖を回していた/腕を動かしながら/時々手足が止まったりもした/

湖のなかにいる蛭(ヒル)を飼いつづけている老人だった,散切り髪の仙人のような風貌で,痩せこけた浅黒い顔が,熱心に湖面のなかを見つめていた

>いったいなにをなさっておいでですか?
通りがかる彼(*)は訊ねた

>“自分の目や耳や腕の,肉とするために蛭をとっているのだよ”
老人はささやくようにそう応えた


>///養殖のための水槽が近くにないニョーニョーコマーシャル/コップの水を移しかえては相づち打つコマンドの顔/あのぅ、あんのぅ/ケイケン()ちの()ちの/砂漠がさ迷う/詩が死に/死が詩に/詩の欲する先を/若くして聞きかじる
‖わたしがグラスの氷を‖棒で‖叩いて/叩いて‖をつなぎ止め/文字る/もじり/張りつき/引っ掻き、滲ませ、、,、、_叩いて_叩いて/棒の柄で‖叩いて‖叩いて‖ハッケョイおこったおこった‖おのこがおこった/‖グラスの縁からゴロゴロころげた‖‖‖



老人も,彼も,なにも思い及ばぬことであったから,以降二人はなにも応えようがなかった
老人は,じっと目を瞑り口を塞ぎ,自身の肉となる無数の蛭たちを杖に張り付かせていた,しかし誰もみなその水蛭を目にした者はいなかった
彼は,この老人が持っているカイ(χ)の無数の水蛭をただ思い浮かべるだけ思い浮かべながら,文字にしてたくさんの詩を綴じた,
彼がこの老人と出会ってからは,いつどんな時も,心のうちでその老人のことについて考え続けていた.




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(本作の註)
ワーズワスと『決意と独立‐水蛭を取る人』のオマージュ作。
彼(*)とは詩の主人公の『私』もしくは『ワーズワス自身』を含ませている。
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