日本の国立大学の、文学部および人文社会学部の廃止の件について


読売新聞が今日このことについて紙面の編集手記ならびに社説に掲載されていた。

【編集手記】
バイオリンの親方のようなコントラバスという楽器があるが、オーケストラでは合奏の底を支え、自ら主旋律をかなでることはあまりない。話術家の徳永夢声は『いろは交友録』に書いている。〈素人が聴くと、メロディーはやっておらんし、無くても済みそうに考える。ところが、バスのあるとないのとでは音楽全体の重たさと幅とが違ってくる〉学問の世界でいえば、文学部ではさしずめコントラバスにあたる。理工系のように経済成長の主旋律を奏でることではない。そでも古典や哲学、歴史の探求を通じて学問全体の重たさと幅とを支えてきたことは確かであろう。文部科学省が国立大学に通知し、文学部など人文社会学系や教員養成系の学部・大学院に、組織の廃止や他分野への転換を迫ったという。…『荘子』にいわく、〈楽は嘘に出ず〉。太鼓も笛も、弦楽器も、音は空洞から鳴り出でる。無用な空洞と切り捨ててはいけない。筆者不肖文学部卒、すでに弦が何本か切れて演奏不能の身ながら、コントラバス存亡の危機を憂える

【読売の社説】
 「知の拠点」としての役割を果たせるよう、国立大学が自ら改革を進めることは重要だ。
 文部科学省が、86の国立大学にたいし、組織や業務の全般的な見直しを求める通知を出した。
各大学は通知を踏まえて、来年度から6年間の運営目標と計画を作成する。
 2004年の国立大学法人化により、大学の運営や財務は自由度が高まった。にもかかわらす、魅力や個性に乏しい大学があるのも否めない。
 大学がグローバルに活躍する人材や地方創生の担い手を育成する機能への期待は大きい。文科省が今回の通知で、各大学に改めて、強みや特色を明確に打ち出すよう促したのは近いできる。・・・・・
 疑問なのは、文科省通知が、文学部など人文化学系や教員養成系の学部・大学院について、組織の廃止や社会的適用性の高い分野への転換を迫った点だ。
 確かに人文社会系は、研究結果が新産業の創出や医療技術の進歩などに結びつく理工系や医学系に比べ、短期では成果が見えにくい側面がある・・・・
 企業内教育のゆとりがもてない、仕事での即戦力を大学に期待し、 英文学を教えるより 国連 英検で
高い得点を採らせる指導を大学でしたほうが有益だとする議論すらきこえてくる
 古典や哲学、歴史などの探求を通じて、物事を多面的に見る眼や、様々の価値観を尊重する姿勢が養われる。大学とは 幅広い教育や深い洞察力を学生が身につけていく場でもあるはずだ。・・・・・
 厳しい財政事情も踏まえれば、メリハリをつけた予算配分大切だろう。ただ、『社会的要請』を読み誤って人文社会学系の学問を切り捨てれば、大学教育が底の浅いものになりかねない。



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