記憶が省かれていく、誰のためでもない、こ、そ、あ、ど、れって テ

この身ならぬ日を
一字一句に抱えて、
はらいせ

記憶が省かれていく、誰のためでもない、こ、そ、あ、ど、れって テキトー

少しずつ離れていく
故里とを引き裂く空に、

私の両手・目・足。ハンドルを廻し、アクセルを踏み込む、カイロスの風


行き死をわかつ特攻操縦が、競う見世物、夜のテントの屋台船、一斉に明かりを落とす。おとり操作の機銃飛行から数えきれぬ弾丸が、見張りのデッキに立つ祖父のこめかみをすり抜けていく。命中はただ一発だが私は生きていた。物資を運ぶ貨物船に祖父はいた。一隻一隻の仲間の船は魚雷の激突と共に炎をあげながら沈んでいく。
隔てた故里をあとに沈んだ人々、その生き残りの船はただ一隻だったと。爺は昔を昔話のように、そんな語りを私の過去にきかせていた。記憶は、なぜか、故郷を、語らせてしまうものですもの。

帰郷を終え、歯の痛みを抱えながら、一夜のハイウェイ、車のなかでこんなこと、記している
長旅でもないのに、帰るあてどがどこへやら、失踪したい欲求にかられながら、停泊する、PM23:00、

無人シャトルバスの、窓のなかにうつしこまれた乗客座席
うっすらと青白く照明を落とした車内にポツリ、男が見おろしている
狭い視野の二重窓から、誰かを待つふうな、眼鏡の若い貌影に、なかんずく私はそれを見て、車内で宿をとることに決めた

パーキングで流す音楽はタテタカコ。アルバムを変え、彼女は、わたしの故郷の演歌。まぁたまには、聴いてやるのだ。卑怯者
http://www.youtube.com/watch?v=Mtax-6EkjD4

http://www.youtube.com/watch?v=5o2MD2dv7Sk

http://www.youtube.com/watch?v=8gMUz5nGcAY



わたしはふたつがひとつになればいいとゆうと、
それは
もののいのちをたべてあじわうもののことだと
ゆう、
口に持っていくそのもの、いのちをひとつ、口に運び、手に持つ箸がつまんでいる、
濡れた歯に
奏でるウタを
咬みながら
否、否、
田舎者の嘘つきめが
ただ眠るまえ、

もののいのちは生き死を視て描くもの、もののいのちに土を盛る、色を盛る、
コトバに噛む
一言の次ぐおと
声にならぬおと
舌と歯先の歪んで
消えたあの
無邪気な/と胸/を
露に、この春、夜

もののいのちは肉にふれるもののこと
もののいのちは土にふれるもののこと

野原に凭れて眠りに就いた
野辺の草に埋まり
人身の罪を訪ねて
もののいのちは生き死を視るもののこと
もののいのちは生き死を描くもののこと、
もののいのちに色を盛り、線を盛り、描く春、

画のなかに夜灯が走る
ふたつとひとつとが
瞼のなかを走る
ふたつがひとつとに
なればいいとゆうと、

引き裂く思想は
父と子の
我が身の憎悪の肉。


、歯が濡れている




*十七歳*

ある日ぼくは青い夕日をみた。氷のように冷たく、鉄のように固く、刃物のように鋭い夕日だった。そいつは空をなめまわした。そいつは空をくっていった。黄色いピンクのお面は、冷たい青いマスクにかわっていったのだった。
ある日ぼくは青い道を歩いていた。わき道の景色がどんなに寒々としたものであるか、
冷えた空気が死んだ霧のようにたちこめていた。そのとき僕のまわりの景色がぼくを捕らえようと、おくそえむ笑みを浮かべながら白霊の吐息がぼくをしばりあげた。ぼくはミイラのように固くなった。ぼくの体はとんがりだし、ぼくの肉は外にほうりだされた。さっき空をたいらげていたそいつは笑いながらこう答えた。
 「まわりがこんなに青いのはおまえにとってとても幸せなことだ
  誰がおまえを征することができようか
  これからおまえは詩人になりすまして旅をする
  おまえの外界を退いた空間のなかで
  しかしおまえは詩人の声をきき、旅をする
  これからおまえは詩人たちと出会い
  彼らの清純なる魂をみていくことになろう。」

… … …

  石ころのはなし
おまえがどれほど卑しいものか知らんが、それはおまえの勝手な思い込みさ。
いくらおまえのこころの内をわたしに聞かせようと、そんなのなんのなぐさめにもなりゃしないよ。おまえがどんなに小さくつまらぬものであっても、おまえは腰を低くして他人から学ぼうとしなくちゃいけないね。たとえわたしがとるにたらぬちっぽけな石ころであろうと、賢明なぼくらにも立派な真理があるのさ。おまえにはそれがみえるかい。

 ロウソクのはなし
きみの気持ちをぼくは素直にうけとめるよ。今度はぼくのはなしをきいてくれよ。
時々だけどね。暗がりのぼくをみてみんなが陰気でねくらなやつだって、ばかにするんだよ。そりゃ太陽みたいな見事な明かりを灯すことなんてできないさ。ちょっとの風で消えてしまうぼくとくらべたら、本当にすごいと思う。真っ暗な砂漠をひと吹きでものの見事に明るい草原につくりかえてしまうんですもの。かないっこない。でもね
そんな立派な太陽でもできないことがあるね。広い広い大地を照らすことができても、
あんな強い陽ざしじゃぁ、ぼくを照らすことはできないね。ぼくみたいな弱い火は、なんのためらいもなく消し飛ばしちゃうのさ。太陽に照らしだされたものは結局、受動のものでしかないんだよ。まるで生死を裂くようにこの世を二分し、明暗の光のなかにぼくらを追いやってしまうのさ。でもぼくは違うね。ぼくの光はありのままを写しだす。そのものの本源をうつしだす。ものの弱さをしっているからね。だからぼくをこれ以上陰気呼ばわりするのはよしてもらいたいね。


  本

わたしたちはみんなによまれたいの
ねぇこの、虹をひらいてごらんよ
  
ねぇそんなにないてちゃ
  おうちへかえれないよ
  ほらみてごらんよ
  きれいなにじが
あんなにくっきり

ねぇそんなにないてちゃ
にじがくもにかくれちゃうよ

てをかざしてごらん
みあげてごらん
きれいなにじがみえるよ
あんなにとおくにあるのに
あんなにたかいところにあるのに
なのにあんなにくっきり

ねぇそんなにないてちゃ
にじがあめにぬれちゃうよ

  ギターと きたキツネ

彼はもうかえってこない
あれから18年
彼のギターが蔵のなかで目覚めること
その白いおひげは北風でふるえている
彼はかえってくるだろうか
春夏の原野で遊ぶこの時期
彼はでももうかえってこない


  作家を志したものが言ったおはなし

あのときとても大きな粒でないたのだ
でも今はなきたくない
かなしみはとてもおおきなものだが
あのとき落ちたものは
それは勇気という名
そして雨が降った
俺はそのまま
とても大切なことばを知った
山はそのまま流れ
谷は深くて短い
川は滝を知り
海のこころを知る
ただ一人のにんげんが生まれない
その大きな 大きな 物

ただ 無いものが 欲しい






*5月をまえに/2013/04・25

真夜中の迷い道を徒歩

針射す真っ赤な街の夕

君の瞳に目覚めた空が

耳にひそめる少年少女

ありふれた夢中を抱え

むせる咳を刻みながら

にぎやかな文字盤の目

分秒針を重ね合わせた

その五線譜を綴るのだ

歩む両手を互い握りしめ、ムーンと蒸せた日差しの直中を、太陽はほころんでいた。つぶさに瞳を耀かせながら、雲は逆さに流れていた、いつしか君とは逆に流れていたのだった

だから
さようならとは邂逅だ
とはだから
いつか君の元へと語る

たどり着くだろうか

この背中を縫ってく

かぜを

君の閾を通り抜けて

かぜは

あるく少年少女たち

傷つく

こころの燃えかすを

戸張に

みえる玄関の明かり

眩い光

そして沈黙

帷の

その光の風を煽りつ

むせ込んだ気管支炎

その背中はベッドに

横たわり心を傷の中

に負いながらも君は

みなぎらせている魂

その嘆く骨の聲を

人々は救っていく

人々は救っていく

天地を繋ぐ滑車を

引き上げては降し

持ち上げては降し

魂は少し軽くなる

引きながら押して

押して引きながら

大地を這いながら

その人の聲吐く息

聞こえぬ聲

無言の中の

その拍手を

向井秀徳をききながら
FMのあのアシッドジャズ
ある独りの詩人が
彼は今も
今までもこれからも
言葉を紡いでいる

2013/04/25