アンドレ・タルコフスキー監督 ノスタルジア

 Andrei Tarkovsky  nostalgia   

http://www.youtube.com/watch?v=9962RH8xnfs
http://www.youtube.com/watch?v=KT_li-WHcII
http://www.youtube.com/watch?v=U7-nYpu_F2M

タルコフスキー監督はこの映画の制作においてソ連から出国し、完成後に亡命した。主人公のロシア人作家(アンドレイ・ヤンコフスキー)はタルコフスキー自身と解釈されており、ところどころに「故郷」の美しい光景が、長いカットで挿入されている。

ロシア人作家アンドレイ・ゴルチャコフ(ヤンコフスキー)は、助手で通訳のエウジェニア(ジョルダーノ)と共に、故郷ロシアに帰れば農奴となることがわかっていながら帰国し、自殺した作曲家パヴェル・サスノフスキーの取材のために、モスクワからイタリア中部トスカーナを訪れていたが、旅も終わりに近づいていた。アンドレイは持病の心臓病を患っており、余命が長くなかったのだ。二人がシエーナまで訪れた理由は教会に祀られてあるマドンナ・デル・バルトの聖母画を見るためであったが、アンドレイは「君たちの美を見るのにはうんざりだ」と言い残し一人外を歩き回り、エウジェニアだけが教会に訪れる。そこには修道女たちとイコンに祈りの言葉を捧げる修道女がいた。その日の夜に泊まったホテルで、アンドレイは自分の故郷の夢を見る。そこには霧に包まれ、走り回る少女と森の風景が広がっていた。

旅の最後に立ち寄った小さな温泉街バーニョ・ヴィニョーニで、二人は「もうすぐ世界の終末が訪れる」と信じ込み、家族を七年にわたって幽閉し周囲から狂人と呼ばれる男、ドメニコ(ヨセフソン)に出会う。エウジェニアはドメニコの言動に苛立ちを覚え、二人の元を去るが、アンドレイはドメニコに対して関心を示す。アンドレイはドメニコが住処とする廃屋に訪れる。そこは天井から常に水が滴っており、壁には「1+1=1」という奇妙な数式が書かれてあった。ドメニコはアンドレイに第九を聴かせ、「蝋燭に火を灯し、広場の温泉を渡りきることが出来たら、世界は救済される」と言い、アンドレイはそれを約束する。

アンドレイはその後宿に戻るが、エウジェニアは「恋人が待つローマに戻る」と言い残して、アンドレイの元を去る。アンドレイもローマを訪れ、エウジェニアから一本の電話を受け取る。内容は「ドメニコがローマに渡り、演説を3日間に渡って続けている。彼は自分があなたに言った事をしたかと尋ねている」というものだった。アンドレイは再びバーニョ・ヴィニョーニに戻る。

ドメニコはカンピドリオ広場のマルクス・アウレリウス像に上り、人々が固唾を呑んで見守る中で演説を続けていた。「私たちは無駄と思える声に耳を傾けなければならない」「私たちの耳と目に大いなる夢の始まりを満たすのだ」そしてドメニコは狂乱の中で頭からガソリンをかぶり、エウジェニアが心配して駆けつけた頃には時すでに遅く、大音量で第九を流し(彼が言うところの、”音楽” を「発動」し)ながら、自らに火を付けて焼身自殺を遂げる。

一方その頃バーニョ・ヴィニョーニに戻っていたアンドレイは、かつてドメニコに言われていた、蝋燭に火を付けて温泉を渡りきるという試行を行っていた。時には手で、時には後ろ向きで歩いて、またある時には上着で風を遮ろうとするも、どれも失敗に終わってしまう。しかし、三度目の試行で遂に温泉を渡りきることに成功したアンドレイは突然倒れてしまう。心臓病による死期が迫っていたのだ。その時またアンドレイは故郷の夢を見ていた。そこには懐かしい故郷と、雪が永遠に降り続ける風景が彼を包んでいた。