つもるもなく

  つもるもない

呼び止められた妄心造語が幾ばくも背中を流れ
街街の息が楽しげに小旅行者たちを行き来させる
可愛い通りを一人着飾る店のガラス越しに立ち止まり
ショウウィンドのドレスを着せて茫然と突っ立っている

なにもかもつもるもなかった

キミは尾形亀之助そっくりだよ、と言ってくれた松尾あきらが昔居た

欠けているもの、ただそれだけのケケ文句
携帯で打ちっぱなし、ただ神経ばかりが鬱に入り
つもるもなくて癒えるか

私は私自身にあこがれた

蜘蛛の巣を張った、尾形亀之助の茶色くチビた詩集本が、なにやら孤独に存在していた

書かれた言葉が宛てられず摘まめんホコリがふわふわふわふわと、浮遊しながら右下斜線のアスファルト

落ちる目を落としながら、自分の書くを信じて願った

つもるもなくて
いまだに野辺の草
一日一日、陽も夜も
出戻りをゲロゲロ吐いては徘徊するに

空に叫ばず
天気はどうだ?
と空を仰いだ
ノッポリ鼻先の、
古傷確かめ
鼻水すする

妄心造語が背中を駆け抜け
抜け作最初の、行きたがうばかりか
街街の楽しげな小旅行者たち、その往来通りを
何人たりとも
つもるもなくて
抜けていく
腑抜けどもが
わんさかわんさかわき出ては通り抜けてく。夜道である。

終電ないね
ねぐらへと足を運ぶ
目をつぶり
鳥の巣のような頭の毛を
ぐしゃぐしゃやって
ほっかむり、帰途中である。あぁ終り。