尾形亀之助
(1)瞬間のうちに知的、情緒的な複合体を呈出すること。
(2)余剰を切り詰めて、具体的な「事物」それ自体を明確なことばで表現すること。
(3)因習的な韻律を排して、新しい音楽性をもった韻律を創始すること。
By深尾
明るい夜
一人 一人がまったく造花のようで
手は柔らかく ふくらんでいて
しなやかに夜気が蒸れる
煙草と
あついお茶と
これは ──
カステ一ラのように
明るい夜だ
*
眠らずにいても朝になったのがうれしい
消えてしまった電燈は傘ばかりになって天井からさがっている
**
音のしない昼の風景
工場の煙突と それから
もう一本遠くの方に煙突を見つけて
そこまで引いていつた線は
唖が 街で
唖の友達に逢つたような
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短い詩ですが音に対する神経の細やかさを感じます。ちょっとした助詞の違いもみくびれません。
また詩の行と行とが、言葉の意味として橋渡しをしながらも、飛び石のように行文を散らばせながら、スケッチした(?)情景を、自由なスケールで、広げてくれます。